むし茶の「むし」とは


■ 深むし茶・中むし茶・若むし茶の「むし」とは

むし=蒸し。煎茶の製造工程の第一段階で葉を蒸す。 蒸し時間の長さの違いで呼び名が分かれる。

収穫されたお茶の葉はそのままでは酸化発酵がすすみ傷んでしまう。

日本茶は「蒸し」によって酸化発酵を止めることが行われる。 「蒸し」のほかに「炒る」方法があるが、世界的にみると「炒る」ことによって酸化発酵を止めることの方が多く、「蒸す」ことにより美しい緑色を保ったまま製造される日本茶は世界のお茶の中でも珍しい存在。

 

■ 蒸し時間によって変わる味わい

蒸し時間が短いほど渋みが残り、香りが高い。水色は上級なほど透明に近い金色。

葉の形状はしっかりしていて粉が少ない。

蒸し時間が長いほど渋みが少なくまろやかで深みのある味わい。葉はもろくなり砕けやすい為、粉が多い。 水色は深い緑色で、紺が浮遊するため濁りがある。

 

 

ほうじ茶について


お茶の葉を高温で焙煎て水分を飛ばして作る。

熱湯を注いだときの香ばしい香りは格別。
焙煎時の熱で緑茶に含まれるカフェインが破壊され、渋みも成分タンニンも消えるため、胃腸にやさしいのが魅力。
赤ちゃんからお年寄りまで、幅広く楽しめるお茶。

 

 

「かりがね」呼び名の由来


 初冬、シベリアから群れを成して飛来する雁は小さな小枝をくわえて飛び、海に小枝を浮かべて止まり木にして休んだ。
陸地に到着すると小枝は不要になり、浜辺にたくさん置かれる。

春になり、来たへ帰る雁たちは再び浜辺に寄り捨て置いた小枝を拾って帰った。
しかし、日本で越冬するうちに命を落とした雁たちが持ってきた小枝は持ち帰られることなく浜辺に残った。

その残された小枝はお茶の茎に似ており、別れた仲間を思う悲しげな雁の鳴き声から小枝に似た茎焙じ茶のことを「雁ヶ音」と呼ぶようになった。

 

 

製造方法によって変わるお茶の種類


緑茶も紅茶、烏龍茶、プーアル茶ももとは同じ「チャノキ」から作られる。
同じお茶の生葉から、製造方法によって「お茶の種類」が変わる。
ポイントは発酵度。
大きくは「不発酵茶」「半発酵茶」「発酵茶」の3つに分かれる。

「不発酵茶」の代表が緑茶。
収穫後のお茶の葉をできるだけ早く蒸したり炒ったりして発酵を止める。
発酵が行われないため、お茶の葉の鮮やかな緑色が残る。

「半発酵茶」の代表が烏龍茶
収穫後、一定期間萎凋(萎れさせること)させ、発酵させてから頃合いを見て
炒ることで発酵を止める。
烏龍茶の種類によって発酵度に差があり、緑茶に近い味わいのものから
紅茶のように褐色のものまで様々。

「発酵茶」の代表が紅茶
収穫後、萎凋させた後に揉捻して酸化発酵を促す。
葉の形を整えるなどの工程を経て、さらに十分に発酵させて高温の熱風で
乾燥させながら酸化酵素の働きを止める。

★もうひとつの「発酵茶」プーアル茶
プーアル茶は「発酵茶」の中でも「後発酵茶」に分類される。
収穫後のお茶の葉を蒸して発酵を止め、揉捻する。
その後、お茶の葉を積み重ねて微生物を付けて発酵させる。

 

 

日本の紅茶の発祥


多くが海外からの輸入品が占める紅茶。

しかし、明治時代にはインドへ茶業視察に派遣された多田元吉が
紅茶品種の種子と製茶機械の設計図を持ち帰り、
静岡で紅茶の原木を栽培してその種子を持って全国へ赴き、紅茶栽培の指導をした。

戦後、紅茶の輸入が自由化されると国産紅茶の生産量は自家消費用としてわずかに生産される程度に落ち込む。
近年、生産者や自治体の努力もあり、国産紅茶のやさしい味わいが見直されて注目を集め始めている。

 

 

 

世界農業遺産 茶草場農法


世界農業遺産は、正式名称を「世界重要農業遺産システム(Globally Important Agricultural Heritage Systems:GIAHS)といい、 世界の農林水産業の振興を司るFAO(国際連合食糧農業機関、本部:イタリア・ローマ)が認定し、農業のシステムを評価するもの。

『社会や環境に適応しながら何世紀にもわたり発達し、形づくられてきた農業上の土地利用、伝統的な農業とそれに関わって育まれた文化・景観・生物多様性に富んだ、 世界的に重要な地域を次世代へ継承すること』を目的として、2002年(平成14年)に創設。

登録数は2013年5月現在、世界中わずか25箇所。
草場で刈り取ったササやススキなどを有機物としてチャノキの根元や畝間に敷く伝統農法「茶草場農法」の技術は、より高品質なお茶の生産に向けて努力する農家の方々により継承されている。

茶草場は希少種を含む多くの昆虫・植物の生息地となっており、このように農業と生物多様性が同じ方向を向いて両立していることが世界から評価され、2013年に世界農業遺産に認定。

 

 

日本茶に含まれる成分


 ・カテキン

お茶独特の渋みを生む。抗酸化作用が強く健康面に影響を与える。日光の下で
増加し二番茶、三番茶に多く含まれる。

・カフェイン

お茶の苦みの成分。疲労や眠気を取り除く覚せい作用や利尿促進、消化促進
の働きが知られている。

・テアニン

アミノ酸の一種。お茶のうまみはこの成分による。アルファ波の発生を促すため
リラックスをもたらす。

・フッ素

フッ素が葉をコーティングし、酸に強い歯を作ることから、虫歯予防となる。

・ビタミンA

老化の原因となる過酸化物質を抑制する、抗酸化作用をもたらす。
ビタミンA、C、Eはどれも抗酸化作用と美肌効果がある。

・ビタミンC

コラーゲンの生成に関わるので皮膚や粘膜の健康に影響を与える。ビタミンA同様
に抗酸化作用がある。

・ビタミンE

抗酸化作用と血行を良くする効果があるので、肌の老化防止にもつながる。

・フラボノイド

強い抗酸化作用や抗菌作用に加え、消臭効果もある。においを抑えるので
口臭対策に。

 

 

お茶とデザートの意外な組み合わせ


ほうじ茶×煎餅
カフェインの少ないほうじ茶は、たくさんの量を飲みやすく、塩味の煎餅と好相性。

ほうじ茶×プリン
プリンのキャラメルの甘さを、個性の強くないほうじ茶の味が引き立てる。

煎茶×ワッフル
ワッフルやパイなどのサクサクした食感と甘みは、煎茶の適度な甘みと苦み
にマッチする。

煎茶×チーズケーキ
後味が残るチーズケーキに対して、煎茶を飲むことで口の中がさっぱりとし、
くどさが和らぐ。

抹茶×チョコレート
抹茶の苦みとチョコの甘みが調和してバランスがとりやすく食べやすくなる。

玄米茶×アイス
アイスの味をしっかり味わった後で玄米茶が口の中をさっぱりさせる。
また、玄米茶特有の穀物の香りがアイスに香ばしさを追加する。